中学校国語科課題エッセイ 質問者/LUI

◎女性
◎中学3年生
◎学校で提出しなければならないエッセイ
◎中学校の国語の先生
◎文章を通して、矛盾していないか、説得力があるかを確認していただきたいです。
これは、提出するエッセイの一部です。遠藤周作の白い人 黄色い人について論じます。よろしくお願いたします。

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遠藤周作は、『白い人 黄色い人』のそれぞれの主人公たちに名前を与えていない。そのため、本論では、これが正しい表現かはおいておき、簡略化を図るため、『白い人』の主人公を白い人、『黄色い人』の主人公を黄色い人と記す。

『白い人』は時系列に九話で構成されている。愛人を作り、放蕩生活を送るフランス人の父親と結婚したプロテスタントであるドイツ人の母親をもつ白い人。幼少時代、母親の厳しい禁欲主義を押しつけられ、生きてきたことがこの人物の根本的な人間性を作り上げている。ある事件より、虐待の快楽を伴って肉欲に目覚めたが、その後、母親の希望に沿って、大学へ通い、弁護士になるための勉強をしたいた。しかし、そこで出会った、神学生のジャックと彼に逆らうことのできないマリーテレーズと関わるうちに、神に対しての不信感を改めて感じていた。そして、第2次世界大戦中、フランスを裏切り、ドイツ軍の秘密警察に所属し、拷問を担当することとなる。しかし、そこで大学生時代にかかわりのあった、ジャックの拷問を担当してしまう。

彼は、非常に興味深い人物である。彼は神や正義といった部類のものに何も期待をしなかった。しかし、絶対的だと信じる「悪」を信じ、最後までその信念を突き通していた。その原因はいくつか存在する。

一つ目は、彼の家庭状況だ。幼い頃から、両親からの愛情をもらえなかった彼は、次第に、両親と自分の間に線を引き、どこか達観したように、人を観察するようになる。そして、彼が見たのは、放蕩を繰り返す、父親とその父親を愛している母親だ。異常なまでにキリスト教に執着する母親がまったくといっていいほど報われていないことを見て、既にこのころから彼は、神への不信感があったのだろう。

二つ目は、彼の肉欲への目覚め方だ。禁欲生活を強いられてきた彼は、年老いた犬が虐待されているところを見て、虐待の快楽を持って、肉欲に目覚めた。後世、彼は自分のこの性質を次のように解釈している。
-なぜ、そのような感覚が、他の子供には目覚めず、自分だけにひらかれたのか今でも私はふしぎに思っている。フロイト流に言えば、こうしたサディスムは自分の母に対するコンプレックスによるという。もし、その理論通りならば、私は自分を厳しく教育した母をひそかににくんでいたのではあるまいか。子供としての悦びや自由を禁じ、あのクロワ・ルッスの一室に幼年期を送ら奏とした母の中身に女性のすべてにたいする憎悪を養ったいたのだろうか。だが、断って起きたが、私の場合サディズムはこれらの都合のよい精神分析学の理屈通りにはいかなかったのだ。私はたんに女性に向かってのみ、自分の加虐精神を感じたのではない。女性のみならず、すべての人間、大げさにいうとならばすべての人類を苛みたいという欲望を私は感じ出したのである。

三つ目は神学生だったジャックだ。ジャックは異常なまでにキリスト教を信仰し、自分自身で「十字架を背負う人間」と話していた。そういった言葉を受け、幼少のころから不信感を抱いていたキリスト教徒への考え方を完全に否定し始める。引用した文章のようにこの時期から、一定の人々にのみに抱いていた憎しみの感情が、すべての人間に対してのものと気づき、自分の性質について深く理解するようになる。

学生時代、白い人は、ジャックが「自分は神学生になることで、十字架を背負い、人々に救いを与える」といったことについて述べた際、「あんたが、いくら十字架を背負ったって、人間は変わらないぜ。悪は変わらないよ。」と返している。彼は、変わっていってしまう曖昧なものではなく、変わらないどの時代にも存在した「悪」という絶対的なものに心を開いたのだ。

彼の母親、ジャック、マリーテレーズ、彼に多大な影響を及ぼした人物は、全員キリスト教徒であった。しかし、全員、幸せとはいえない人生を送った。そんな彼らの姿を見ることで、白い人は神を拒絶したのではないだろうか。

私の考えをまとめると、白い人は神を信じていなかったがその変わり悪を信仰していたという結論にたどり着く。白い人は、彼の育った環境、関わってきた人々に影響により、正義といった理想論を信じない、どこか達観した青年だ。しかし、宗教が身近にあるという環境から、ある一つのことに対し、信仰を抱くという行為に疑問を抱いてはいなかった。これは、西洋人の宗教的価値観とまったく違うようで、とても似ている。何かを心から信仰するといった要素を捨てきれなかった彼は、その変わりに、神と正反対の悪に依存し始める。