◎質問者(文章執筆者)の性別/ 男
◎質問者(文章執筆者)の年齢・学年/ 27歳
◎文章の用途(「入試用の志望動機」など)/ 木工学校の入塾課題論文
◎文章の提出先(受験する大学、会社など)/ 木工学校
◎チェックしてほしい事柄・ほしいアドバイス/ 『卒業後、社会でどのような役割を担をうとするのか』という課題に沿った内容になっているか?
(指定字数2000字程度です。)
「エコ」という言葉が巷にあふれてはいるが、我々の社会は、依然として「人類さえ消滅すれば、地球環境は極めて良好になる」というような危機的な状況が続いている。
そうした現在の社会状況において、木工は社会でどのような役割を担っていく必要があるのだろうか。
本論で注目したいのは「木育」である。
木育は、木材を利用してゆくための単なる普及活動に留まるものではなく、木材を利用することを通じて、
「産まれた時から老齢に至るまで木材に対する親しみをもつこと」、「木材の良さや特徴を学び、その良さを活かした創造活動を行うこと」、「木材の環境特性を理解し、木材を日常生活に取り入れること」と位置付けられる。
また、これらを通じて、様々な素質を持った人間、例えば、森林育成活動へ参画する人間や自然環境及び生活環境について自ら考え行動できる人間などを「育む」きっかけとなる活動であると位置づけられる。
以下に、木育を通じて木工が社会で担っていく役割について論じることにする。
まず、この章では、木育という取り組みについて「触れる活動」、「創る活動」、「知る活動」の3つに分けて解説することにする。
触れる活動
現在、身近な生活用品から木材、とりわけ国産材の利用が減少している状況にあることから、木材に触れ・感じる機会についても少なくなっている。
このため、まずは自然素材としての木材の有する「暖かさ」「やさしさ」に代表されるような感覚的な木材の良さについての認識を、大人の押し付けでなく、五感を通じた楽しい活動を通じて持つことが重要である。
これにより、体験者、特に子供たちには「木材が好き」「木材と仲良くしたい」といった気持ちが醸成され、木材の良さを体感的に理解した人間が育まれる。
このことは、一緒に体験する友人や親、場合によってはその場で初めて出合った人とその気持ちを共感することによって、より深まっていく。
また、活動を通じて、「木ってなに?」「どうしてこんな匂いがするの?」といった、様々なものに好奇心を持つ人間が育まれる。
このような子供たちが楽しい時間を誰かと共感した体験は、将来、地域の森林や木材について気づくきっかけが得られる。
創る活動
我が国では木材を用いた「ものづくり」が盛んに行われてきたが、現在では、社会環境の変化から、「ものづくり」の機会は減少してきている。
しかし、木工や工芸を通じた「ものづくり」は、我が国の技術や文化の基礎になっているだけでなく、「ものづくり」を行う過程において、自ら考えつつ様々な障害を解決することから、創造的な思考で問題を解決できる人間を育てることとなる。
また、このような「ものづくり」活動を行うにあたっては、木材のもつ特性を理解するための科学実験的な要素、例えば、縦挽きと横挽きの違いや、まさ目面、板目面、木口面の加工性の違い等を組み込むことにより、材料としての特徴を理解した人間を育むことはもとより、創る活動へのスムーズな移行を支援するとともに、先達の残した文化遺産(彫刻や建築物等)を技術的な観点から理解出来る素質が育まれる。
知る活動
優れた体験活動(特に創る活動)は、木材に対する興味や好奇心を喚起する。
この段階においては、これら興味や好奇心に十分答えるために、木材と環境の関係について、科学的な知見を基にした知識を提供する。
それにより、木材の利用と環境の関係を理解した人間、そして、その理解を基に、木材製品を選択・利用できる人間が育まれる。
また、科学的な知見を基にした知識を持つ事は、森林に対する更なる好奇心を喚起させ、森林体験活動への参画はもとより、直接的・間接的を問わず、森林育成活動へ参画する人間が育まれることが期待される。
加えて、木材の利用については、一見、森林の育成や地球環境の保全と相反する事象にとられがちであるが、木材利用とこれらの関係について気づくことをきっかけに、どのような活動や生活が環境にどのような影響を与えているのかをを判断し、消費活動をはじめとした、環境に配慮した行動ができる人間も育まれる。
以上、ごく簡単ではあるが木育について説明した。私はこの木育という活動に大いに賛同している。
では、具体的に卒業後、どのような活動をしていくのか。
一つ実現したいと思っているのが、北海道旭川で行われている「君の椅子プロジェクト(旭川市内でその年生まれた子供に対して椅子を一脚贈るという取り組み)」のような地域密着型の取り組みを大分県及び国東市、商工会などと連携しつつ進めていくことである。 また、家業が元々建具屋ということも生かし、障子、舞良戸、框戸などの和室の減少とともに馴染みが薄くなった和建具の良さを木工教室などを通じて伝えていく活動もしていきたい。
以上のような木育の考えに則った活動を増やしていくことで、私は木工の社会的役割を果たしていきたいと思っています。